取引先の人と酒を飲んで久しぶりに実家に帰りみんな寝静まった家でしんみり歯を磨いていたらふと、暗い廊下の先、電気を消し忘れた玄関の灯りの下に小包が置いてあるが目に入った。多少酔っていたせいか、自分宛の郵便物なんて滅多に来る筈のない実家なのに直感的に「あれは俺のだ」と確信して手に取ると果たして自分宛であった。
差出人の名前には見覚えがあった。
タケザワさん。
3年前、「土曜フリマの会」で桜木町のフリマに出店した際 、うちの店のほど近くで自作の木製戦闘機を売っていたおじいちゃんだ。中島飛行場時代のエピソードをまるで昨日買い物に行ったスーパーの話をするかのごとく淡々と話す姿が印象的で何時間も聞き入った。その後、何度か手紙のやりとりをしていたが、最近、体調を悪くされたのか、もうフリマには出店出来そうもないので製作した作品をもらってくれないだろうか、という便りを最後に手紙の行き来を止まっていた。深い思い入れの入った作品を軽々しい気持ちで受け取っていいものだろうか、と悩んだまま異動や引越しもあり手紙を出せずじまいだった。
そのタケザワさんから小包が届いていた。
中には零戦が一機と、図面が入っていた。
「陸軍零戦52型A6M5」
3年前のフリマで買った「隼」と同様、丁寧に思いを込めて作った一品。
戦闘機とは不釣合いなほど、全体的にまあるく温かみを感じる。
深夜2時過ぎ暫しうす暗い玄関で零戦を飛ばせながら、タケザワさんの話してくれたエピソードを思い出した。
ちょうど来月、タケザワさんの住む磯子で研修がある。
必ず会いに行こう。